『1回の海外旅行に必要なマイル数+ちょっとのマイルを足すだけで2ヶ国訪れることができるマイル発券方法です。(おまけに国内旅行もくっつけられます)』というブログがありました。
このブログの説明の中で何ヶ所か間違いがありましたので、正しい説明をいたします。
基本的なルールの確認
飛行機での乗り換えは、電車のように3分とか5分で乗り換え というわけにはいきません。
航空業界での「乗り換え(トランジット)」は、通常24時間以内となっています。
「乗り換え(トランジット)」のうち、24時間を超えるような乗り換えを、「途中降機(とちゅうこうき:ストップオーバー)」といいます。
「途中降機(とちゅうこうき:ストップオーバー)」が出来ると、24時間以上滞在出来るので、もうひとつの目的地として利用することが可能になります。
「乗り換え(トランジット)」、「途中降機(とちゅうこうき:ストップオーバー)」の知識があれば、お得な旅行プランが作れるようになります。
ANAマイルを使った予約には、国内線特典航空券、国際線特典航空券、提携航空会社特典航空券という3種類の特典航空券の予約があり、それぞれルールが違うのですが、今回説明するのは、提携航空会社特典航空券の場合です。
提携航空会社特典航空券では、1つの旅程の中に、途中降機を往路・復路いずれかで1回可能、乗り換えを日本国内で往路・復路各2回、日本以外で往路・復路各2回まで可能となっています。
ANAの説明には、「例」が載っていて、
往路 東京 ⇒ バンコク ⇒ シンガポール
復路 シンガポール ⇒ バンコク ⇒ 東京
これを1つの旅行プランで作ることが可能で、往路か復路で途中降機が可能なので、往路か復路のバンコクで、24時間以上の滞在が可能となります。
つまり、シンガポール旅行のついでにバンコク旅行も出来てしまうということです。
この表は、特典航空券を予約するのに必要なマイル表(必要マイルチャート)です。
赤枠は国際線部分で乗り換えをしない場合のマイル数(単純な往復のみ)
国際線部分で乗り換えをした場合には、青枠のマイル数です。
「シンガポール旅行のついでにバンコク旅行も出来てしまう」という利用の場合には、バンコクで乗り換えをしていますので、青枠になります。
単純な往復とは、次のような場合で、この場合には赤枠のマイル数です。
往路 東京 ⇒ シンガポール
復路 シンガポール ⇒ 東京
間違いは誰でもするものです。
間違いのあるブログは、個人の方なので、詳しいブログ名等は、載せません。
間違いを非難するつもりは毛頭ありません。
間違いを信じて、損をしてしまうことのないように、知識を高めましょう という趣旨で説明しています。
間違えたブログがあるということは、間違いやすい箇所ということなので、例題として利用させていただきました。
この方のブログの中でも、これから説明することを「とても複雑な仕組み」と書いていますが、確かに簡単ではないかもしれません。
でも、理解するとお得なプランが作れるようになります。
少し難しいかもしれませんが、頑張って読んでみてください。
今回は、「1回の海外旅行に必要なマイル数+ちょっとのマイルを足すだけで2ヶ国訪れることができるマイル発券方法です。(おまけに国内旅行もくっつけられます)」の説明の中で、どこが間違えているのかを示し、正しい考え方を解説します。
「ちょっとマイルを足すだけ」というのは、「必要マイルチャート」の青枠を利用するということです。
確かに、赤枠に比べて、ちょっとだけマイル数が増えています。
このブログのANAの提携航空会社特典航空券のルールの説明で、「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国には復路で途中降機(ストップオーバー)可能」と言っています。
これが誤りです。
この1文で、2ヶ所間違えています。
1つ目の間違い
1.「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国」であっても、途中降機(ストップオーバー)可能ではない場合もあります。
「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国」という文章には、厳密にいうと、さらに2ヶ所の間違いがあります。
ゾーン(Zone)で考える
1つは、細かいことなのですが、特典航空券の利用にあたり、国ごとに判断するのではないく、ZONE(ゾーン)ごとに考えます。
例えば、ロシアは1つの国でありながら、3つのZONE(ゾーン)に別れていますので、国ごとではなくZONE(ゾーン)ごとのいい例だと思います。
国や地域と、ZONE(ゾーン)を混同して説明しているブログを見かけます。
乗り換え地や途中降機(ストップオーバー)、目的地は、国とか空港とか地域ではなく、ZONE(ゾーン)で考えます。
分かって使っているのであればいいのですが、ちゃんと使い分けないために、読者に誤解を与えかねない間違えた説明のブログが多いです。
つまり正確には、「出発地から目的地に必要なマイル数以下のZONE(ゾーン)」と説明すべきです。
「国」⇒「ZONE(ゾーン)」
「出発地から目的地に必要なマイル数以下」だけではない。
もう1つは、「出発地から目的地に必要なマイル数以下」が、間違いです。
出発地から目的地に必要なマイル数以下でも、乗り換え地や途中降機(ストップオーバー)が出来ない時があります。
例えば、日本からハワイへ行く場合で説明します。
マイル表(エコノミークラス)の横列の赤枠内を確認してください。
日本からハワイ(ZONE(ゾーン)5)は、43,000マイルです。
日本から韓国(ZONE(ゾーン)2)は、18,000マイルです。
日本から香港(ZONE(ゾーン)3)は、23,000マイルです。
日本からシンガポール(ZONE(ゾーン)4)は、38,000マイルです。
ZONE(ゾーン)2、ZONE(ゾーン)3、ZONE(ゾーン)4は、すべてZONE(ゾーン)5の43,000マイルより少ないマイル数ですが、ハワイ(ZONE(ゾーン)5)へ行くときの乗り換え地や途中降機(ストップオーバー)とすることは出来ません。
ANAの規約・ルールを見てみましょう。
「出発地からの必要マイル数がより高いゾーンの都市を乗り換え地点にすることはできません。また、乗り換え地点から目的地までの必要マイル数が出発地から目的地の必要マイル数を上回るような乗り換えはできません。」と表現されています。
この文章の前半部分「出発地からの必要マイル数がより高いゾーンの都市を乗り換え地点にすることはできません。」を簡単に説明すれば、「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国」ということです。
しかし、後半部分「乗り換え地点から目的地までの必要マイル数が出発地から目的地の必要マイル数を上回るような乗り換えはできません。」これも満たさないと乗り換え地に出来ないと言っております。
三角形で説明します。
文字で表すと分かりにくいので、図で説明します。
図では、出発地、目的地、乗り換え地1、乗り換え地2と表現していますが、厳密には、出発地のあるZONE(ゾーン)と(のあるZONE(ゾーン))と思ってください。
まず、ANAの規約・ルール 前半部分、
「出発地からの必要マイル数がより高いゾーンの都市を乗り換え地点にすることはできません。」
出発地から目的地の必要マイル数(A)と出発地と乗り換え地(B、B´)を比較し、Aの方が大きくないと乗り換え地と選べないということです。
ANAの規約・ルール 後半部分は、
「乗り換え地点から目的地までの必要マイル数(C、C´)が出発地から目的地の必要マイル数(A)を上回るような乗り換えはできません。」
出発地、目的地、乗り換え地1 青三角形を見て下さい。
出発地-目的地 マイル数A
出発地-乗り換え地1 マイル数B
乗り換え地1-目的地 マイル数C
A,B,Cを比較するとAが一番長い(一番マイル数が多い)
Aが一番長い三角形が作れるような乗り換え地1は、乗り換え地として選べます。
出発地、目的地、乗り換え地2 赤三角形を見て下さい。
出発地-目的地 マイル数A
出発地-乗り換え地2 マイル数B´
乗り換え地2-目的地 マイル数C´
A,B´、C´を比較するとAが一番ではない(C´が一番長い(一番マイル数が多い))
Aが一番長い三角形ではないので、乗り換え地2は、乗り換え地として選べません。
乗り換え地として選べるかどうかは、出発地と乗り換え地のマイル数だけではなく、乗り換え地と目的地のマイル数も調べて、乗り換え地として選べるかどうかを評価することです。
マイル表(エコノミークラス)の縦列の青枠内を確認して下さい。
韓国(ZONE(ゾーン)2)からハワイ(ZONE(ゾーン)5)は、55,000マイルです。
香港(ZONE(ゾーン)3)からハワイ(ZONE(ゾーン)5)は、55,000マイルです。
シンガポール(ZONE(ゾーン)4)からハワイ(ZONE(ゾーン)5)は、65,000マイルです。
日本からハワイ(ZONE(ゾーン)5)は、43,000マイルです。
すべて、43,000マイルより大きいので、三角形の図だと、赤い三角形になっています。
つまり、韓国(ZONE(ゾーン)2)、香港(ZONE(ゾーン)3)、シンガポール(ZONE(ゾーン)4)は、ハワイ(ZONE(ゾーン)5)への、乗り換え地とすることが出来ません。
「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国」だけでは、説明不足ということです。
2つ目の間違い 「往路」でも可能
2.乗り換え地としての条件を満たしていれば、「復路」だけではなく、「往路」でも途中降機は可能です。
このブログでは、途中降機が出来るのは、復路に限定していますが、往路でも可能です。
なぜ、勘違いしたのか、私の想像ですが、説明します。
ANAの説明図です。(2019年時)
この図を見て、勘違いしたのだと思います。
上の「例1」では、なれない旅程、下の「例」では、なれる旅程です。
さらによく見るとどちらもまったく同じ旅程なのです。
東京(Zone1)⇒ニューヨーク(Zone6)⇒ホノルル(Zone5)⇒東京(Zone1)
まったく同じ旅程なのに、上はなれる旅程で、下はなれない旅程です。
文字をちゃんと読まず、図だけをパッと見ると、違いは、往路に乗り換えか、復路に乗り換えかというように見えます。
これを、往路だとなれない旅程、復路だとなれる旅程と勘違いしているのだと思います。
実際には、この図は、往路や復路を説明している図ではないのです。
目的地は、一番遠いZoneですよ ということを説明しています。
ホノルル(Zone5)とニューヨーク(Zone6)を比較すると、東京からのマイル数の多いのは、ニューヨーク(Zone6)です。
この図の右端が目的地で、ホノルル(Zone5)は、目的地になれませんという説明なのです。
図だけを見て、往路では乗り換えが出来ないと勘違いしても仕方がないのかもしれません。
このように勘違いされる方が多いとANAも思ったのか、2020年2月頃、説明のデザインが変わり、2つの図がだいぶ離れた場所に掲載されたので、勘違いしにくくなったと思います。
実は、文章でも説明しています。
途中降機の説明をしっかり読めば、ここに往路・復路いずれかとなっていますので、復路だけではなく、往路でも可能なことは分かります。
実際に予約してみましょう。
いずれにしても、往路でも大丈夫かどうかは、実際に予約出来るかどうかを確認してみれば確実です。
2つの旅程は、共にニューヨークとホノルルに滞在しています。
ニューヨークとホノルルでは、ニューヨークはZone6、ホノルルはZone5なので、ニューヨークの方が東京からの必要マイル数が多いため、2つの旅行プランは、いずれもニューヨークが目的地です。
つまり、
東京からニューヨークが、往路
ニューヨークから東京が、復路です。
上の旅程では、まず、東京 ✈ ニューヨークなので、これで往路はおしまいです。
ニューヨークから東京へ戻る途中(復路)で、ホノルルへ寄っています。
つまり、復路でホノルル(途中降機)
下の旅程は、まず、東京 ✈ ホノルルなので、まだニューヨークに着いていませんから、往路です。
ホノルルの後にニューヨークに着いて、ここで往路はおしまいです。
ニューヨークからどこへも寄らず東京へ戻ってきます(復路)
つまり、往路でホノルル(途中降機)
この様に、往路でも復路でも乗り換えは可能です。
結論
「出発地から目的地に必要なマイル数以下の国には復路で途中降機(ストップオーバー)可能」
を訂正すると、
「出発地から目的地に必要なマイル数以下のゾーン(Zone)かつ、諸条件を満たせば、往路または復路で1回、途中降機(ストップオーバー)可能」
が正解です。
少し長くなり、難しかったかもしれませんが、正しい知識があれば、マイルを使った旅行プランのレパートリーが増えるので、予約しやすくなります。
アフターコロナでは、お得なマイルを使った旅行プランが作れるように、マイルの知識を増やすことに使うのもいいかもしれませんね。